HOME > 敗者の条件 なぜ受験に失敗するか

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過去の清算

不合格を記した通知。かなわぬと知りつつ続けた「合格の祈り」は封筒の中に印刷された味気ない文字によって終わった。

受験期、日々自分を苦しめた胸の圧迫感からは解放された。
しかし、気持ちは晴れるはずもない。
「あと20点とれていれば合格したのに」
「あの箇所を覚えていれば—」
「あの講座を受講していれば—」

不健全な後悔は中途半端な学習をした者ほどより強く、全く学習しなかった者ほどより陰湿に尽きることなく湧き出ている。自責の念にかられることはなく、無対象への恨みが自分を支えている。
そして、広がる闇が今も自らを蝕み続けている。

上述した後悔をすべて過去において修正したとしても結果は変わらなかった。過去において、幾度となく正しい道を選択していたが最後に1つだけ道を誤り未来が変わったわけではないのだ。幾度となく正しい道を選択できたはずなのに、誤った道を選択し続けた結果、現在に至っているのである。

気がついているであろうか。自らが修正しようとしている過去は、他者は絶えず不変で、今となれば結果が自分に有利になるように組み替えたに過ぎないということを。 自分勝手な修正を施して招来させようとしている「未来」は、実は自らの過ちを隠蔽するための自分にとって都合のいい「現在」なのである。

過去の一部分を変えた程度では未来は変わらない。より確定的な未来を望むのであれば、結果を導く全ての過程に目を向けて、十分な情報収集と自己鍛錬を心がけるべきである。
日本史という受験科目において、失敗した者がどのような経過をたどったのかを検証してみようではないか。

もう二度と嫌な思いをしないために。

鏡の中の弱み

ボーリング場に3つのレーンがある。
2つのレーンは1つのピンにつき10点、10本すべて倒すと100点が与えられる。
残りの1つのレーンは1つのピンにつき15点、10本すべて倒すと150点が与えられる。各レーンで1回ずつ投げられるとすると、245点のラインをクリアするにはどこのレーンのピンをどれだけ倒せばよいか。

「100点の各レーンで必ず9本倒し、150点のレーンで5本以上倒す」という作戦を考える人はまずいないだろう。

しかし、大学入試ではそうした神がかり的作戦が尊ばれ、かつ成功すると信じている学生が多数存在する。入試ではピンは倒さない。大学教授が作成した問題を「解答」するのである。他人がつくった問題を常に90%以上正解することは不可能である。

350点満点で245点の点数をどう割り振るかは自由である。しかし、まず9本のピンが確実に倒せることが現実的かを考えるべきであろう。150点のレーンで5本倒せばいいと思っているのになぜ100点のレーンで9本倒せると考えてしまうのか。答えは簡単である。100点のレーンで9本倒せる自信があるわけではない。『150点のレーンで5本以上倒す実力と自信がないから』である。

重要な点は現実的でない得点のその思い上がった割り振り方の背景にある「自身の負い目」の無視にある。そしてそれこそが敗北した受験生の"最初の誤り"なのである。

自分の弱点に無関心を装うことで安心しようとした瞬間、自分の弱みが鏡となって、現実的な思考を全てはね返す。鏡の世界は全てを逆にしてしまうので不可能なことも可能に見えてしまう。この鏡をたたき壊さなければ正しい道に戻ることはできない。

受験は3教科の点取り合戦である。はじめから自身が不利になる条件で戦う必要はない。自身が不利とならないように、常に弱点に目を向け、その克服に多くの時間を費やさなければならない。もう分かっているのだろう。自分が受験する大学では150点のレーンは何の科目であるのかを。

それでも不利な条件で戦い、勝利を願う受験生は憶えておくといい。

奇跡とは幾つもの必然が偶然に集まって生じた必然の結果である。
ゆえにあなたには奇跡はおこらない。

学部別得点状況資料(2005年早稲田大学)

学部別得点状況資料(2005年早稲田大学)

大学入学試験では各科目の配点は必ずしも同じではない。難関大学の多くは外国語の配点を日本史に比べて30%~50%高くしている。

英語、国語が平均点程度で、日本史だけで合格最低点をクリアしようとすると、日本史の点数は政経学部では85.72点、法学部では37.61点、一文では 45.68点となる。政経学部では配点以上となり、不可能なことがわかり、法・文でも94%、92%というほぼノーミスで解答しなければ合格最低点に到達できない。

このことから他教科の失点を日本史でカバーしようという考えや、日本史だけで難関大に合格しようという考えは現実的ではないということがわかる。また、いたずらに語句量を増やす学習に終止することは貴重な学習時間を浪費するだけだと心得ておくべきである。

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