生徒不在授業
【自己満足に浸る講師】
「うん」、「よし」、「OK」。
別に講義を聞いた生徒がその内容を理解したときに出た言葉ではない。
講師自身が講義の合間に言っているのだ。
「あんたが“よし”でもこっちはよしじゃないんだよ」
私は思わずパソコン画面に言い返してしまった。
社労士試験に限らず、実証的に他の講師の授業をeラーニングで受講してつくづく感じることがある。それは、講師が受け手である生徒を全く顧みないで、授業を自分自身の中だけで完結してしまっている、自己満足型の授業が多いということである。
信じられないだろうが自己満足型の講義では内容を生徒に理解させることよりもその講の範囲を時間内に終わらせることが優先される。そして時間内に終わらせることができた満足感からでた言葉が「よし」なのだ。まさに生徒不在授業である。そこでは生徒の理解など推し測られることはなく、講義に工夫が凝らされることもない。与えられた講座が無難に消化されているだけなのだ。生徒不在なだけではなくプロフェッショナルもいないのである。
また、こうした授業では必ずと言っていいほど「分かっているでしょうが」「常識的に」という発言が多くなる。
経営者は気がつかなければならない。
こうした発言が多く出る授業はすでに教えることで金銭を貰う教育サービスの要件を満たしていない。もはやサービスとして提供された教育と受講生が金銭を払って求めているものが異なっていることは明白であり、今後はそれを受講生の能力差という言葉で片づけ受講生に責任転嫁することもできないであろう。
「あんたが“よし”でもこっちはよしじゃないんだよ」
教わる側に立った自分が言い放ったこの言葉は教える側の自戒としなければいけないのではないだろうか。