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記憶の森の迷路

【意味記憶と無意味記憶】

暗記には順序がある。

その順序を間違えると学習効率が悪くなるばかりか、定着度も低くなり正誤問題などで解答を導くことができなくなる。社会保険労務士の試験も、大学受験における日本史学習と同じく暗記が前提となってしまうものなのでこの考え方があてはまるはずである。私が受講した資格専門学校の教材も、まず基本語句を暗記させるハンドブックがついていた。

さて、暗記の順序を語る前に、暗記行為と記憶に関してまず述べておきたい。

通常、暗記科目の学習は意味記憶(その語句の意味を理解し記憶する)から入る学生と無意味記憶(意味を理解せずその語句のみを記憶する)から入ろうとする学生がいるが、そのどちらも受験においてリスクのあることを忘れてはいけない。

無意味記憶は語句の意味づけを行わず、その語句のみを音や形などで記憶することであり、大人よりも子供が、女性よりも男性が得意とする記憶の方法である。子供がCMなどで意味のないフレーズの歌を好んで歌ったり、日本全国の駅名をすらすらと言えたりする子供がTVで紹介されたりするのはこの無意味記憶が関連している。当然、成長し社会性を持つようになると、語句とその意味を自己の社会生活に関連させて覚えるかを判断するようになるので無意味記憶で語句を覚えることは困難となってくる。記憶力を年齢と関係づける人もいるが、これは年齢とともに社会性が増し無意味記憶では語句を覚えなくなっている習慣性からくるものである。また、女性は男性よりも早熟であり社会性を早くから身につけているので学生時代から無意味記憶で語句を覚えることが苦手な人が多い。

さて、記憶の保持という点から考えれば、無意味記憶よりも意味記憶のほうが記憶保持力が高く、試験の解答率が高いと考えがちであるが、論述問題をのぞき資格試験など機械的に解答するような設問には順応性が低い。これは、こうした試験が一定の範囲で同種の問題を反復して制作しているので条件反射的に語句が出てくる方が、その種の問題に対応しやすいのである。それに対して意味記憶では設問文章全体と意味づけして覚えた語句をすべて整合させながら解答を試みているので、その設問に近い過去問をやっていたとしても「これ前にみたことがある」という感覚にはならず、常に未知の新しい問題を解答しているという不安を抱きながら試験問題に向かっていることになる。ゆえに同じような問題に何度もひっかかり間違えてしまうのである。

また、こうした間違えを繰り返していると、意味記憶のデメリットからくる問題を、自己の意味記憶の習得不足と思い込み、さらに意味記憶を深めようとする傾向がある。意味記憶は当然にその語句量が多いほど記憶に要する時間が多いわけだから、これらにより受験リスクが高まっているのである。受験においての意味記憶による学習をすべて否定はしないが、ある程度のところでの「割り切り」は必要である。そうしなければ記憶の森の迷路にはまり同じ箇所をぐるぐると回り続けることになる。

一方無意味記憶は短期間で多くの語句量を記憶できるというメリットがあり、過去問などを解くことによってそれら記憶を問題と体系づけてしまえば、空所補充や一部の正誤問題を楽に解答できるようなる。しかし、記憶した語句の意味や語句どうしが関連づけられていないので、アカデミックな文章や長文の正誤問題、もしくは語句だけを正誤の判定としない正誤問題などには全くといっていいほど対応ができない。記憶の森の中で地図と方位磁石は持っているのだか使い方がわからず、結局棒を倒して行く道を決めているのでいつまでも迷路から抜けだせない。

無意味記憶と意味記憶の双方のメリット・デメリットを理解し、時に割り切り、時には意味を踏まえつつ暗記の学習を進めていくのが一番よいのである。ただ、順序として意味記憶よりは無意味記憶を意識しながら最初は学習する方が問題は解きやすいであろう。

私は確信した。

その語句が他の語句とどう関連し、入試で問われるのかを過去問をベースにして受験生に教えることの優位性と、性別や個人差からくる無意味記憶の抵抗感は取り除く必要があるとうことを。


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