悪しき習慣の囚人
学習習慣をつける前に
いよいよ大学受験予備校も開講日を迎えた。多くの受験生が教壇に立つ私の目の前で互いに静かに鎬を削っている。このサイトにくる新しい受験生や保護者の方も多いと思う。そこで、今回は少し受験生の学習行為を鳥瞰して論じてみたい。
資格試験であれ大学受験であれ学習を習慣づけて行うことが合格への最短距離である。しかし、それを愚直に行っているにもかかわらず成績を伸ばせず合格できない人間もいる。その違いは何どこにあるのか。
それは学習にとって害となる習慣性の排除が「最初に」、「徹底して」行われていないからである。学習の習慣づけを行っていても悪い習慣が排除されていなければ、学習効果は打ち消されてしまう。受験生をもつ保護者の方は塾や予備校に行かせることをスタートと考えているが、まず自分の子供に悪い習慣性となる行為をやめせなければスタートラインにも立たせていないことに気がつくべきである。
繰り返すが、まず始めにやることは受験にとって悪い習慣性となる行為をやめることである。
ここで言う受験学習にとって悪い習慣とは、ある決まったテレビドラマを毎週見る。少年誌などを毎週読む。携帯などでサイトコンテンツを利用することなどである。これらは、私達の習慣性を利用してテレビや雑誌、携帯などの媒体を通じ広告宣伝費を稼ぐビジネスモデルである。ゆえに利用者(視聴者)を強烈に引き込むキラーコンテンツを常に私達に発信し続けている。分かっているけど一度やると(見ると)止められない。自分の意思が弱いのではない。百戦錬磨の相手の方が上手なのだ。
テレビは決まった時間に見ているから大丈夫。少年誌や携帯コンテンツは息抜きでやっているんだ。そう理屈をならべる受験生も多いが、習慣性の虜となっている自分を正当化しているにすぎない。結局、テレビが見たいしマンガが読みたいだけなのである。
保護者の方ならおわかりになるかと思う。日常生活そのものがすでに習慣化しているわけだから、そこから1時間、いや30分の時間を作り出すことがいかに大変なことかを。巷で流行りの30分勉強法は日常生活の「合間」というキーワードを使い、習慣化した日常生活の改善そのものに踏み込まなかったので多くのビジネスマンの賞賛をうけたにすぎない。決して勉強法として優れた提案をしているわけではない。
すべての娯楽を排除しろと言うつもりはない。習慣性のあるものを排除するのだ。月に何度か好きな映画を見ることは習慣性とはならないし、カラオケや友人とのショッピング、会食は習慣にはならない。故に習慣性のあるものだけを排除してもストレスに感じることはない。また、ここで指摘する習慣性とは悪しき習慣性ということであるから、日課の散歩やジョギングなどは含まれない。むしろ脳を活性化する習慣性はどんどん行うべきである。
悪しき習慣性は受験期においてあなたやあなたのご子息の貴重な時間をごっそりと削ぎおとしていく。ゆっくりと、しかし確実に。それだけとどまらない。その前後の時間も怠惰、欲情の世界に引きずり込もうとする。だらだらとテレビを見続けたり、マンガを読んだり意味もなく携帯をいじってみたり。悪い習慣性が中心となって1日の生活が構成され、受験勉強が行われていくのである。こうして悪しき習慣の囚人と成り果てていく。もちろん最良の結果など得られない。
魅力的な悪しき習慣の魔の手は今もあなたの目の前で手招きをしている。
予備校のカリキュラムがいくら充実していていも悪しき習慣を断ち切ることはできない。悪しき習慣性は家庭生活の中に潜んでいるからである。
しかし、習慣というものはそれを反復継続しなければ身につくことはない。だから、身につかないようにするために反復継続を断ち切るのである。「始めから」ドラマは見ない。「最初から」携帯コンテンツはやらない。悪しき習慣の魔の手から子供を守るため、時には家族全員の協力も必要となるだろう。
誰も悪しき習慣の囚人と成り果て惨めな結果をのぞむ者はいない。
ならば今すぐに始めなければならない。
悪しき習慣性を見つけだし、それを徹底的に排除せよ。