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エビングハウス

外部刺激が記憶を消去する

無意味記憶(意味を持たない語句の羅列)の場合、暗記後1時間後には56%を忘却するとエビングハウスは実験から導いた。いわゆるエビングハウスの忘却曲線だ。インターネットの語句検索にも多く登場し、資格試験関係のサイトにこの言葉を見つけないことはない。

私は忘却曲線が暗記学習におけるリハーサル(繰り返し)の重要性を提起するのには有効だと考える。忘れるのだから一定期間内に繰り返すのだと。それについては私も賛成だ。しかし、私は前記「劣化する記憶」でインプットのみの学習方法には問題点があることを指摘した。それに一定期間内に繰り返してもつねに 100%の記憶が蘇るわけではない。そもそも予備校の90分の講義すべてをもらすことなく再現できる人間がいるであろうか。

もうお気づきかと思う。1回の授業が終わったその瞬間に実は数十%もの再現不可能な部分がすでに存在してしまっているのである。そして残りの部分がエビングハウスのいう忘却曲線により忘却していくのだ。しかも劣化しながら。

このことから暗記科目を学習する場合、1回目の復習が大変重要であることが分かる。教わった事項が最初に正確に再現できるか否かがこの1回目の復習の効果の是非と今後の学習の効率性を決めてしまう。

そしてこの1回目の復習を最も困難にするのが外部刺激である。

人間の記憶は短期記憶として前頭葉に保存されることは以前にも書いたが、これは無意識の状態でも行われている。私達が道を歩いていても電車に乗っていても誰かと話していても情報は記憶されて続けているのだ。外部からの刺激は常に記憶として保存されるのである。前頭葉は記憶を多くとどめておけないので古い記憶はどんどん忘却ラインに乗せられる。あとから入ってくる最新の外部刺激がさっき習ったばかりの重要記憶事項を忘れさせてしまうのだ。

暗記科目で学習効果を上げたいのならば、再現不可能となる部分をなくすことである。それには再現可能な機器で講義等を録音し、外部刺激を学習直後にシャットアウトできる環境を整えることである。

私は資格試験予備校の講義音声データをダウンロードして、それをスピードアップ(3倍速)で移動中や休憩中に聞いていた。すると、やはり聞き逃していた箇所がかなりあった。聞いた直後に再現不能になっていた箇所である。それだけではない。なんと語句の関連性もその講義で講師は言っていたのである。当初自分の判断で重要性が低いと切り捨てた内容が、何講か講義が進むにつれ実は他の語句と関連性があり重要であったのである。講師が言ったことを切り捨て忘れておいて、後から自分で勉強してそれに気がつくというお粗末で非効率な学習を多くの受験生はしているのではないだろうか。

効果的、効率的な学習を望むのであれば、授業を受け終わった直後の学習を変える必要がある。授業を受け終わった直後、自宅へ帰るまでにその日に録音した講義をスピードを上げて聞き、電車内では講義ノートを開けて今日学習した授業内容を再現することである。また、講義が終わって12時間以内にできるだけ外部刺激を受けない環境を自分でつくることも大切である。保護者の方であればご子息が今日予備校で何を学んだのかを聞いてみるのも再現性には効果がある。

人間性を欠いてはいけないが、「受験でまわりが見えなくなる」というのは外部環境がシャットアウトされた好転反応ではないかと私は考えている。


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