エバラの浅漬けの素のCM
家族で体操ともダンスともつかない踊りで♪きざんでつけてもむだけよー♪でおなじみのエバラの浅漬けの素のCMは、おそらくCMの中に「ゆるさ」を取り入れた最初のCMである。
サラダ漬けの素は川平慈英を中心にミュージカルを意識したきびきびした動きのあるCMに仕上がっているのに対し、浅漬けの素は正反対にゆるさを強調している。これは前者はしゃきしゃき感を視聴者に訴えたいのに対し、後者はしっとりした漬け物のイメージを強調したいに他ならない。
そこで、「つけて→もむ」という歌から「ゆるさ」をイメージさせるため、左手奥で踊るおじいさんの動きの“緩慢さ”が必要になったのである。現在のCMは2本目であるが、最初のCMからこのおじいさんの動きが常に緩慢であるのはそのせいである。おじいさんの緩慢さは、早く漬かるということを暗喩しているのだ。
しかし、このCMにも失敗があった。第1作目は「♪エバラの浅漬け、の素なら、きざんで、つけて、もむだけよ♪」の2節の目の「の素なら」が1節目と離れてしまい、消費者に商品名を覚えさせることができなかったのである。この失敗から2作目(海水浴、ハワイ編)は商品名を2フレーズ目にもっていき(おそらくカットしたかったのであろうがスポンサーの意向を汲んだのであろうがあろう)、またまたゆるーいおじいさんに状況とは異なる服装(ランニングシャツ)をさせて、踊りの途中でおじいさんに振り向かせることで消費者の目を最後部の浅漬けの素の大きなボトルに向けさせたのである。
このCMは商品名を覚えさせる歌だけをとりえとするものではなく、その踊りやキャスティング、背景を十二分に活用した高度なCMなのである。