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クラレのCM

アルパカという動物に「ミラバケッソ」と言わせ、「うまくいえたねクラレ」と抱きつく成海璃子。そばにいるおじいちゃんが「そいつの名前はハナコだろ?」と言うと、成海璃子が「ミラバケッソといったらクラレなの」と反論する。

そう、繊維メーカークラレのCMである。CMを通じてここまで会社名と業種を視聴者に周知させたメーカーを私は知らない。しかし、この会社のCMは幾多の試行錯誤で目的を達成したCMであると私は考えている。

クラレ(kuraray)は老舗の繊維メーカーであるが、現在は化成品や樹脂の割合が売り上げの8割近くを占める。新素材にも力を入れているメーカーである。会社に抱く繊維メーカーというイメージはそう簡単に変えることは難しく、そうした点でテレビCMを通じた周知を行おうと考えたのであろう。

しかしこのCMもいくつかの失敗を犯している。覚えているだろうか。学校のあちこちで生徒が「ミラバケッソ」とささやいたり、歌ったりして、成海璃子が混乱するCMを。これはクラレが目指す新素材メーカーへの脱却をアピールするあまり、新素材の印象のみが突出してしまったCMであった。ミラバケッソってなに?という疑問を視聴者に与えて、それをPCなどで検索させ会社名周知につなげる。そんな狙いが作り手側にあったに違いない。しかし、たかだかCMの言葉をわざわざPCで検索しようとする視聴者は少ない。それにCMで会社と業種を周知させる目的からは完全に外れてしまっていた。

そこで、会社名と新素材をCMの中で周知させようと新CMを作った。それが、アルパカ、成海璃子、おじいちゃんのCMである。ミラバケッソ=クラレを見事に周知したこのCMの本当の核は「アルパカ」にあることを忘れてはいけない。アルパカは奇をてらった動物としてこのCMに登場してきたこものではない。老舗の繊維メーカー、クラレの象徴として採用されたのだ。

なぜならアルパカとは古くから存在する動物で、厳しい気候や食糧事情のなか生息しその繊維 (獣毛)により自らの体とその繊維をもちいた古代人を過酷な環境から守ってきた。そこに繊維産業の盛衰の中で生き残ってきた老舗繊維メーカークラレと重なる点が多かったのではないか。だからアルパカでなければいけなかったのである。アルパカは視聴者にインパクトを与えるだけではなく、CMを採用する役員に対して繊維メーカーたる自負を訴えたものであったのだ。

最新のCMではミラバケッソお守りをもらった嵐の櫻井翔をわざわざアルパカに変身させている。櫻井翔でクラレのイメージアップを狙っているのではない。あくまで主役はアルパカ(=クラレ)なのである。

しかし、動物であるアルパカを生理的に好かない視聴者も多くいるのではないかと私は考えている。こうした批判は目立ち過ぎるCMの宿命である。早晩このCMはアルパカが別の生物に変化するか、動物そのものではなくなると考えている。

それはクラレの企業としてのさらなる飛躍があってこその話だろうが。。。。


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