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ソフトバンクのCM

お父さんは白い犬。お兄さんは黒人。妹は上戸彩。

あまりにも有名になったソフトバンク(ソフトバンクモバイル)のCMである。商品寿命が短い携帯を端末にビジネスを展開する会社のCMの中で、同一キャラクター設定でこれほど長くCMを続けている会社今までに存在しない。それだけ視聴者はこのCMに好感を持ち、会社側は宣伝効果があると考えているのであろう。

知っているであろうか。ソフトバンクが携帯事業に参入したときに誰もが巨人NTTdocomoにかなうわけがないと酷評し、ソフトバンクの株価も大きく下落した。当初はその下馬評どおりに契約者数が伸び悩んでいたのである。しかし、その後は加入者が少ないことを逆手にとり定額通話し放題というサービスを展開し始めたのである。

そしてこの白い犬CMは当時画期的であった携帯電話の同一機種間通話料無料を宣伝するためのものであった。そもそも携帯電話会社としてのソフトバンクを宣伝するイメージ戦略はブラッドピッド、キャメロンディアスといったハリウッドの大物俳優に電話をかけさせるだけという思い切った演出で展開していた。

超売れっ子であった上戸彩ではなく白い犬やお兄さんを主役にしたこのCMはたちまち話題となり、現在はソフトバンクを象徴するCMとして成長を遂げた。

しかし、私はこのCMは、その由来において何か挑発的なものを感じざるをえない。

覚えているだろうか。この定額通話料無料プランのCMで短期間でお蔵入りとなったCMの存在を。テニス部の女子高生が連絡をとりあうときにきみちゃんと呼ばれる人物だけ別会社の携帯なので事後の連絡をしなくていいと友達に断るシーンだ。全員ソフトバンクにすれば定額で通話料無料になるのだということをあまりに端的に示すCMであった。

このCMははからずしも「いじめ助長」との批判を受け、短期間でテレビから消えた。そもそも同一キャリアを持っていないことでいじめが助長されるという議論ならば、携帯電話を持っていないということでいじめが助長されないないように携帯会社のCMは流さない方がいいという話になる。しかしこのCMが学生を使ったものであったため批判的な意見が多くなったことは事実である。

そしてその直後に登場したのが白い犬のお父さんCMだったのである。お父さんが犬。お母さんが日本人。お兄さんが黒人。妹がこれまた日本人(アイドル)。

前のCMを批判していた人間も含めてこう思ったであろう。「このCMは何だ。これは差別を助長するものではないか。」と。

では具体的にどこが差別的なのかというと、指摘することはできない。人間のお父さんに首輪をつけて犬のように歩かせているわけではない。はじめからお父さんは犬で家族にとってそれが普通である。そして、もし具体的なシュチエーションをあげこのCMを批判しようものなら、こう反論されるのがおちである。

「それはあなたの偏見ですよ。」と。

気がついたであろうか。差別とは偏見から生み出される。批判している側に偏見があるなら差別を助長しているのどちらなのか、と挑発しているのである。そしてこのCMの根源には短期間で打ちきりとなったあのきみちゃんCMの批判があるとするのは私の考えすぎであろうか。

差別だ、偏見だと批判された者がたどり着いた境地。それは視聴者にむけた「鏡」の演出で偏見を逆手にとるといった手法であったのだ。

「偏見を持っているのはあなたのほうですよ。」と。

「偏見などもたず、純粋にこのCMを楽しんでください。」と。


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