生徒の連絡先を聞き出す講師にご注意下さい!
今やTwitterやFacebook、インスタグラムなどのソーシャルネットワークサービス(SNS)は個人や企業に広く普及し、特に企業においてはブランディングや広告宣伝の媒体として利用されるようになった。Twitterは、個人の意見がタイムライン上に流れていくなかで、突発的に起きた事件の経過をリアルタイムで知ることができる点で評価されている。
最近では、一国の指導者がTwitterを使い直接国民に自身のメッセージを伝えることで、民心に大きな影響を与えるまでとなった。
しかし、私自身はSNSで個人の意見を発信するつもりもなければ授業に利用するつもりはない。これは心無い人間からの誹謗・中傷の類を嫌っているのではない。予備校講師としての私が、受験生や予備校を介した授業の質問以外のコミュニケーションをとる必要性を感じていないからである。
SNSは発信者や受信者を特定することが可能なコミュニケーションツールである。TwitterやFacebook、インスタグラムなどが他者とのコミュニケーションを目的としたツールである以上、相手(未成年や立場の弱い人間)が望めば(拒むことができなければ)、発信者と受信者の間で個人的に連絡を取りあえるのである。
スマートフォンの普及やアプリの進化によって見知らぬ人どうしがネットワーク上でつながることが容易となり、本来あるべき他人との距離感が相対的に縮まった。その結果、受験生に大学受験教科を教えているに過ぎない赤の他人(講師)を、身内であるかのように接してくる生徒が多くなっている。これは決して講師に対する「親しみ」などではない。「身近な他人」に対する警戒心が著しく低下しているのである。そして残念なことではあるが、これらを利用して自己の欲求を満たそうとする教育関係者を含めた大人の性的な暴行事件はあとを絶たない。
私が知っているあの先生に限ってそんなことはない。そう反論したい気持ちもわかる。全幅の信頼を保護者や生徒の方からいただいくことは我々教育関係者にとっては望外の喜びである。しかし、保護者の方や受験生にお聞きしたい。あなたはその全幅の信頼を置いている人間の何を知っているのだろうか。その人物があなたや子供の前では隠している性癖まで知っているのだろうか。その種の性犯罪は、被害者やその家族の意向により公にならないのだ。自分の子供が不用意に連絡先を教えた結果、親にも言えない状況になっているかもしれないと考えたことはないのだろうか。
もちろん、個人の性癖が犯罪にすぐに結びつくと断言するつもりはないが、その種の犯罪において理性によってコントロールできる歯止めは、世間を知らない未成熟な子供と接する機会が多くなればなるほどかからなくなっていくこともある。
本来、講師ほどの年齢になれば、社会のなかで20歳も30歳も離れた多数の未成年の男女と接する機会などないのである。
社会的事件としてとりあげられる教育者の未成年に対する性的な問題行動は、そのような機会が多くある集団・組織に所属しているからであり、ゆえに前述のような犯罪の発生数はもともと高いのだ。そして組織の規定(禁止事項)を逸脱・無視したSNSによる個人的な指導は、自分だけが特別であると未熟な子供に思い込ませる「手口」として利用されている。
言うまでもなく教育関係者は性犯罪予備軍などではない。しかし、教育現場にいる人間はもともと未成熟な子供と接する機会が多いのであるから、前述の面から考えても子供との接触には最大限の制限をかけ細心の注意を払うべきである。当然ではあるが、塾や予備校ではたとえ相手の了承(それが保護者でも)があったとしても連絡先を聞くことや連絡を取り合うことを禁止事項として書面で講師に通達している。
以上のことから私は双方向性をもつネットワークツールを利用しないのである。
その代わり、私の人となりや考え方、演出上のキャラクター設定などはオフィシャルサイトやYouTube、所属予備校が提供するサービスで紹介している。私と生徒・保護者の窓口は、保護者の目が届かない秘匿性の高いSNSではなく、契約上所属している教育機関(組織)だけである。ネットワーク社会に対応しながら、私は保護者の信頼を損ねる一切の可能性を排除しているのである。