日本史の学力を短期間で飛躍的にあげるインプットとアウトプット

日本史などの暗記が前提となってしまう科目でのインプット、アウトプットには各々2つの意味があります。
インプットは、暗記の作業における語句を頭に入れることと頭に入れた語句に関連性を持たせることです。前記はサクナビの重要語句にマーカーをひき、語句を繰り返し暗記することで身につきますが、後者はサクナビクス(サクナビ)の語句をどのように関連づけるのかというストーリー(物語性)を受験生自身がもつことができないと身につきません。

このストーリー(物語性)とは私が授業で語句どうしを関連させたもの(授業再現性)だけではなく、受験生が何度もサクナビを学習する過程で、自分自身で語句どうしを暗記しやすいようにつなげて理解していくことです。もちろん、これはサクナビを暗記する過程だけではなく、一問一答ではない入試問題を正しく解答する過程でも身についていきます。

ここで重要なことがあります。論述問題では一部例外がありますが、受験生がつくるこの「受験日本史ストーリー」は入試問題を解答する上では決して歴史的に正しい必要がないということです。学習過程で受験生が史実の正しさだけを追求しようとすると「何が受験の解答では重要なことなのか」が分らなくなり、「どうしてそうなるのか、なんでこのことが関わっているのか」という疑問ばかりをもって学習することになります。こうした受験生は、受験日本史に関する指導経験のない人間の過去問の後講釈を追いかけて傷口を深くしていきます。

このようなことは、日本史は好きなのだけど最後まで成績が伸びない受験生や他教科に比べて英語の成績が極端に高い女子受験生に顕著にでる傾向です。(後者については私はこれを「早期英語脳完成による日本史学習障害」と呼んでいます。)

そのような受験生が受験直前に参考書に手を出すというのはまさに危険な兆候です。「へーそうだったんだ。」程度に参考書を利用していればいいのですが、参考書に次々とでてくる知らない語句に不安を増長させ、必要のない語句や背景まで覚えよう、理解しようとして受験勉強をより誤った方向へ進ませる可能性があります。

「問題を解くためには何が重要か」という点でつながっているストーリー(物語性)がサクナビクス(サクナビ)を通じて作れるようなることが大切です。そのためには「余計なことをやらない。自分の興味関心と受験勉強との折り合いをつける。」これを徹底することです。もちろん、あまりに史実と異なるストーリーでは、そもそも問題は解けませんので、そのような場合は、教科書を併用するとよいでしょう。

次にアウトプットですが、これは覚えている語句のみを正しく引き出せるということと、覚えた語句を使って問題を解答できることです。後者は早稲田大学などすこしひねりを加えた記述や選択問題、初見史料問題や正誤問題が解答できるということです。

前者は一問一答の学習でもできますが、後者は確固たる知識の定着と上述したストーリー(物語性)をどれだけ多くもっているかがカギとなります。受験生にも経験があると思いますが、「なんだか分らない問題だったけど、あれとあれとあれを持ってきて考えるとこの答えしかないよな。」というものです。

実はこの解答ルートは「正確な歴史のストーリー(過程)」からつくられたものではないものが多いのです。これは、苦し紛れにつなげた語句で答えようと作った解答ルートが、大学入試という客観テストを解答する程度ならば通用するということも意味しています。

この解答ルートこそ私のサイトで紹介した「個体環境差」による生徒固有に存在する、ブラックボックスなのです。このブラックボックスの中をのぞき込むことはできませんが、合格者からのヒアリング調査により、この解答ルートを多く作れる受験生の多くは上述のストーリー(物語性)をサクナビの反復学習によって身につけていることは分っています。

ですからサクナビのストーリー(物語性)と問題演習をおこなう際には解答ルートの確認と検証を、難問を解く都度自分自身に問いただしながら学習することが重要です。

勘違いしてほしくないのですが、私は決して正しくない歴史を勝手に作ってもよいとか、正確でない歴史でもいいとか、勝手な解釈で歴史を理解してもいいとは言っていません。当然ですが、私の授業で正しくない歴史を教えているわけでもありません。基本軸として史実の正しさは知っていなければいけないのです。

私が言っているのは、難問を解答する過程には、歴史的にみれば無関係の語句を組み合わせたり関連づけたりしなければ正解にたどり着けないことが多いということです。つまり、入試では「作法の正しさ=行儀のいい解答姿勢」が要求されているのではなく、「時間内に問題を解決(処理)する能力」が問われているのです。

                                             日本史講師 土屋文明