前回の記事の続き(最終話)です。
正誤問題が解けない(正答率が低い)受験生は、正誤問題に対するアプローチを間違えています。
正誤問題を解答するには、目の前にある正誤文と頭の中にある知識を「照合」し、「整合性を確認する」という作業が行なわれなければいけません。
「整合性を確認する」という作業では、頭の中にある知識(厳格に覚えた正しい知識)を主体として、照合した上で整合性を確認しなければなりません。当たり前のことなのですが、多くの受験生はこれができません。それは、厳格に覚えたはずの知識を拡張させて正誤文に近づけようとしてしまうからです。
誤文に近づくと、絶対に問題は解けません。
例を挙げてみましょう。次のふたつの文章の整合性を確認して、下の文章が誤文と言える根拠を指摘して下さい。
主体となる知識:群馬県の岩宿遺跡からは多くの打製石器が発見された。
照合される正誤文:群馬県の岩宿遺跡からは打製石器の他に化石となった人骨などが発見されている。
「そもそも打製石器が発見されたことによって遺跡の存在が確認されたわけだから、岩宿遺跡→打製石器という順番こそがおかしいんじゃないのか。」なんてつっこみはやめてくださいね。一般的な受験生がもっている知識はこの程度です。もちろん、正確には「岩宿の関東ローム層とよばれる赤土層から打製石器が発見された。」ですよね。
さて、受験生が学習している教材には、岩宿遺跡からは人骨が発見されたとも、されていないとも書かれていません。ですから「人骨が発見された」という文を見ると、「もしかすると人骨も発見されているのは?」と考えてしまいます。
ほら、主体となる知識が拡張されて正誤文に近づいてしまいました。
整合性を確認する作業では、厳格に覚えた主体となる知識と合致しているかどうかを確認するだけであって、照合される正誤文の側の情報量でその作業が変更されたり、修正されることはないのです。正誤文の情報量に惑わさてしまってはいませんか。
お皿の上にりんごが1つあるものを正解とした時、 りんごとバナナとみかんが各1つずつのっているお皿は正解ですか。もしかすると、正解の皿には2日前までりんごとバナナとみかんがあったかもしれないと考える人がいるでしょうか。
「ちょっと待ってくれよ。だったら、さっきの問題では未知の情報(化石となった人骨などが発見されている)があるのだから判別不能じゃないか。土屋の正誤では正誤の判定ができないんじゃないか。」
いいえ、それは違います。
判別不能に分類される文章は、正誤文を判別する情報そのものが主体となる知識にない場合です。照合できる情報がある場合(「群馬県の岩宿遺跡からは多くの打製石器が発見された。」)は、その情報を主体となる知識として整合性を確認すればいいわけです。
最後に一つだけお願いがあります。
間違っても、この記事を読み終えた後に、「岩宿遺跡 人骨」などとネットで検索しないで下さいね。それは誤文に近づく行為そのものです。
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日本史講師 土屋文明